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高知新聞 掲載記事転載  2010年 映画 「君踊る、夏」のモデルにもなった実話です。




がんと闘い今夏も舞う 「よさこい」は生きる喜び

淡い照明に踊り子の姿が浮かぶ。鳴子を振る腕に汗がきらきら。夜の運動場。「ハッ、ハッ!」。

ひときわ大きな掛け声を吐いていた少女が列を離れ、母親の元でちょっとひと休み。
高知市の小学5年生、堀内詩織ちゃん(10)。3歳で小児がんと宣告された。

いつも命と向き合っている。「よさこい祭り」は生きる喜び。今年も「夏の主人公」を演じきる。

詩織ちゃんがよさこいに心を躍らせたのは3歳の夏。胸とおなかに点滴の管をつながれた病室の中だった。
太陽の下、華やかに楽しく踊る人波をテレビが映し出していた。

幼稚園で血尿が出て病院で検査を受けたのはその1カ月前。
腎臓に腫瘍(しゅよう)が見つかった。

判明した病名は「腎悪性横紋筋肉腫様腫瘍」。

有効な治療法が確立されていない、症例の少ない、転移のしやすいがんだった。

「2年の生存率は25%。5年、生きた例は聞いたことがない」。
医師は両親に覚悟を求めた。

母親は悩んだ末に、幼い娘にがんであることを告げた。
その「告知」をされた時のことを詩織ちゃんは覚えている。

「あと何カ月かな」「仕方ないな」と思ったという。

その一方で、幼い心は「治らないかな」と希望の言葉を繰り返していた。
ただ、同じ病棟の同じ年ごろの子が亡くなった。

家族の泣き声を聞いて、怖くなった。

「次は自分かな…」1年3カ月後に退院した。


2度の抗がん剤治療で髪の毛が抜けていた。
それでも詩織ちゃんは「また生えてくるき大丈夫」と、明るく丸刈りで幼稚園に戻った。
体調はたびたび崩した。園を休むたび、自分のできないことが増えている感じがした。

雲梯(うんてい)でみんなが楽しそうに遊んでいるのに、自分だけできない。
悔しくて自宅近くの校庭で特訓をした。鉄棒をうまくつかめるようになるまで園に行かなかった。
みんなと一緒に同じように遊べた時、「治るかもしれんと思った」。

踊りたい

病室で見たよさこいは、目に焼き付いて離れなかった。
退院してから毎夏、詩織ちゃんは「踊りたい」とねだった。
幼稚園では「おどりのせんせい」と夢をつづった。

が、激しい運動は厳しく止められていた。母親は必死でなだめ続けた。

小学2年生になった年、あまりの熱意に母親は「ほにや」から申込書を取り寄せた。

詩織ちゃんのあこがれのチーム。


それでも、踊らすかどうか、迷った。
炎天下の踊りは体力を奪う。「もしかしたら死ぬかもしれんで」。
娘に率直に投げ掛けると、詩織ちゃんはまっすぐ見つめ返した。

「死んでもかまん。踊りたい」。譲らなかった。

医師の告げた「生存例のない5年」まで1年になっていた。
「本人の生きたいようにさせたい」。

医師に伝えて、了解を得た。練習では思うように踊れず、何度も注意された。
家の窓ガラスに自分の姿を映し、一人、練習を重ねた。





夢にまで見た本番。詩織ちゃんはそれまで見せたことのない笑顔で踊った。
母親はその姿を泣きながら追いかけた。

詩織ちゃんはメダルを三つももらって大はしゃぎした。
祭りが終わっても、家で「踊るき、メダル掛けて」と何度も受賞ごっこ≠せがんだ。



遠いところまで

「ほにや」の一員として県外遠征にも出掛けるようになった。
「次はいつやろ」。踊る機会が待ち遠しい。

この8月。練習前。詩織ちゃんは「毎年どんどん楽しくなった。
うまくなりゆう感じがする。それが楽しい」と少し照れて笑った。

気付けば「5年」を乗り越えていた。

今も月1回の血液検査を受けるが、「前みたいに怖くない」と言う。
「おどりのせんせい」への夢は具体的になった。

「ほにやの一番前で踊って、よさこいのインストラクターになる」がんと闘い、迎える4回目のよさこい。

「なんか、長い、遠いところのことまで思ったら、生きられるかなーって、今は思う」


詩織ちゃんは元気にこの夏も舞う。


(高知新聞より)
   

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